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中学生にウエイトトレーニングはタブーなのか?

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スポーツ界には古くから、「ウエイトトレーニングをすると身長が止まる」という噂が存在しています。私(昭和生まれ)が学生の頃も、先輩から同様のことを言われた記憶があります。この噂以外にも、「中学生にウエイトトレーニングをさせるべきではない」と主張する指導者もいます。
しかし、これらの主張は本当に正しいのでしょうか。「成長期である中学生の身体に無理をさせてはいけない」という主張は一見もっともらしく聞こえますが、すべてのケースに当てはまるのでしょうか。例外は存在しないのでしょうか。自重の筋力トレーニング(腕立て伏せ等)とウエイトトレーニングは何が違うのでしょうか。早くからウエイトトレーニングに取り組み、成果を上げている人はいないのでしょうか。ウエイトトレーニングに積極的に取り組み、本当に身長が止まった人がいるのでしょうか。たくさんの疑問が浮かんできます。
ウエイトトレーニングは本当に中学生にとって悪なのでしょうか。それを考えてみましょう。

成長期の身体的特徴を理解する

成長期は大きく分けて「第一次成長期」と「第二次成長期」の二つがあります。
第一次成長期は、生まれたばかりの赤ちゃんが急激な身長の伸びを見せる時期のことを指しています。新生児のときはわずか50㎝あまりだったのが、4歳になる頃には倍程度の身長になります。 
第二次成長期は、一旦緩やかになった身長の伸びが急激に増加する時期と捉えられます。この時期は「第二次性徴期」とも呼ばれており、一般的には男子が11歳6か月~16歳前後、女子が10歳~15歳前後に起こるといわれています。
早い場合は男子で9歳、女子で7歳7か月頃から始まるといいます。遅い場合でも、男女ともに17~18歳前後までに成長期が終わると考えられています。
この時期を過ぎると、身長の伸びはほとんど見られなくなるといわれています。成長期が終わると骨端線が閉じ、身長が伸びにくくなります。骨端線の伸びは身長の伸びであり、骨芽細胞の作用によるものです。

成長期は一概に「何歳から何歳まで」とは言えません。なぜなら、個人差や男女差があるからです。小学生のうちに身長が伸び切って中学以降は停滞する人もいますし、小中と身長が低かったのに高校でいっきに伸びる人もいます。ですから、「中学生は」とか「小中学校の間」で区切るのは正確さに欠けます。ですが基準が無いと話がややこしくなる為、大よその目安として年齢を基準に話を進めます。

噂の検証「ウエイトトレーニングで身長は止まるか」

成長期のウエイトトレーニングが身長の伸びを阻害するのかという点について考えてみましょう。先ほど述べた通り、身長の伸びとは骨端の伸びであり、それには骨芽細胞が関わっています。「噂」が本当であれば、ウエイトトレーニングは骨端を破壊するか、骨芽細胞の活動に影響を与えているということになります。
ウエイトトレーニングが骨端と骨芽細胞に悪影響を及ぼす可能性があるか否かについて考えてみましょう。筋肉は骨に付着しています。骨端に影響を及ぼす可能性があるとすれば、筋が大きな力で収縮した際に、付着部の骨端が剥離する等が考えられます。実際に成長期のアスリートは大人に比べて剥離骨折が多く報告されています。しかしこれはウエイトトレーニングに限ったことではなく、通常の運動で起こる場合もあります。陸上競技においては、短距離のスタート、跳躍種目の踏切時など、体重の数倍から十数倍の負荷が一瞬でかかる局面が存在しており、これらの競技動作も剥離骨折の原因となりえます。つまり、「ウエイトトレーニング」が剥離骨折を誘発しているわけではなく、大きな負荷を筋にかけることが原因なのです。もしウエイトトレーニングを危険なトレーニングだとした場合、ジャンプ動作や急な方向転換など、競技スポーツに存在する動作の多くは成長期には危険な運動だということになってしまいます。

では仮に強度を下げて中程度の負荷のウエイトトレーニングを行った場合はどうでしょうか。一説によると、成長期の適度なウエイトトレーニングは、成長ホルモンの分泌を促進し、骨端線に刺激を与えることで成長に影響を与えると言われています。成長ホルモンが多く分泌されることで、骨芽細胞が増えるので骨端線の伸びが加速するとさえ言われています※。

噂とは真逆の可能性が出てきました。

しかし、これは適切な負荷を適切なフォームで行えばの話です。
ウエイトトレーニングは間違ったフォームで行った場合、怪我のリスクは高まります。しかし、これもウエイトトレーニングに限ったことではありません。間違ったフォームでたくさん走れば、怪我をします。それと同じことです。何事も正しい動作の習得が重要なのです。

どうやらウエイトトレーニングが中学生にとって悪という説にはほころびがあるように思えてきました。

中程度の負荷で正しいフォームで行えば、ウエイトトレーニングはむしろ噂とは真逆に有益な可能性さえ出てきました。

さらに深掘りしていこう

成長期のアスリートにウエイトトレーニングを導入すべきかどうかについて、さらに深く考えていきましょう。
成長段階に応じて発達しやすい能力があることは、多くの方がご存知でしょう。ここでは、成長を3つの段階に分け、ウエイトトレーニングを導入すべき段階にあるのかを考えていきます。年齢を目安に記載しますが、これはあくまで目安であり、成長が遅い子、早い子はさまざまです。年齢はただの数字でしかありません。年齢や教育機関の枠組みにとらわれるべきではないと思います。

「3~8歳(プレゴールデンエイジ)」は、子どもたちの運動神経が著しく発達する時期である。この時期は、「神経の発達」が特徴で、神経系の発達が著しいため、運動神経の基礎が形成されます。この時期には、特定のスポーツや運動ばかりでなく、色々な遊びやスポーツ、運動を経験しておくことが大切です。また、適度な運動が神経系の発達を促進し、運動神経を伸ばす効果があるとされています。ただし、同じ運動ばかりを繰り返し、運動内容が偏ってしまうと、特定の「能力」だけしか獲得できず、その他の「能力」の獲得が充分に出来ないまま、成長してしまう恐れがあるため、偏りがでないように気をつけることが重要です。つまり、ウエイトトレーニングの単調な動作で筋肉を鍛えるよりも、優先してやることがある。陸上的に言えば、様々な遊びやスポーツに挑戦して楽しく色々やってほしい期間です。

「9~12歳(ゴールデンエイジ)」は、子どもたちの運動神経が著しく発達する時期である。この時期も「神経の発達」が特徴で、プレ・ゴールデンエイジよりも、身体の使い方や競技技術的な動きを習得しやすい期間である。スピードやパワーよりも動きにフォーカスしてトレーニングすることが重要な期間であり、この期間に習得した技術は一生失わないものとなります。つまり、この期間においてもウエイトトレーニングで単調な動作で筋肉を鍛えるよりも優先してやることがあるのです。陸上的に言えば基礎ドリルなどを習得してほしい期間です。
 
「13~15歳(ポストゴールデンエイジ)」ポストゴールデンエイジは思春期にあたり、体が一気に発達します。筋力や骨格の発達が著しく、パワーやスピードがアップします。この時期には、プレゴールデンエイジとゴールデンエイジで得た運動能力や技術を磨き上げることが重要とされています。しかし、この時期には、筋肉量や骨格が急激に変化するため、これまで学んだ体の使い方やスキルの感覚が狂ってしまうことがあります。これを「クラムジー」と言います。そのため、一時的に新しい動きを覚えることに時間がかかることがあります。そのため、新しい技術の習得よりも、今までの体の使い方をより実践で使えるように意識することが重要です。
一つ手前のゴールデンエイジでしっかりと技術を覚えることが非常に重要になります。つまり、いまできることをブラッシュアップしつつ、筋力発達に励むべきだと捉えることができます。ポストゴールンエイジにおいてはウエイトトレーニング導入の余地はありそうです。

しかし、その効果を大きく引き出すためには、プレゴールデンエイジとゴールデンエイジ期にしっかりと技術の習得をしておく必要があります。技術や身体の使い方をおろそかにしたまま、ポストゴールデンエイジ期に筋力を高めても、高めた筋力で使う技術が無い状態になってしまいます。また間違った体の使い方や、間違ったフォームのまま筋力だけつけた場合、本来意図しないかたちで大きな力を発揮することになってしまうため、筋や腱の損傷に繋がります。

中学生チームにウエイトトレーニングを導入することは可能か

これまで、ウエイトトレーニングが身体に及ぼす影響について考察してきましたが、ここからは実際にウエイトトレーニングを導入する場合について考察していきたいと思います。
ウエイトトレーニングを導入しようとすると、乗り越えなければならない壁が存在します。それは、適切なフォーム指導と負荷の設定です。マシンであろうとフリーウエイトであろうと、適切なフォームで行わなければ怪我につながります。
ランニングフォームが不適切な場合、すぐに疲れてしまったり、スピードが上がらないなどの問題が起こります。不適切なフォームでは、怪我をするリスクもありますが、同時に怪我すらできない、怪我をするだけの出力に至らない場合もあります。つまり、多少間違っても即座に大けがにはならないのです。
しかし、ウエイトトレーニングは重りを扱います。中程度の負荷であっても、間違ったフォームで行った場合、怪我につながりやすいといえます。イメージしやすい例としてはギックリ腰です。床から重いものを持ち上げる際に、膝を曲げずに、猫背になりながら持ち上げると腰を壊してしまいます。比較的怪我をしにくいと言われているマシントレーニングのシーテッドレッグプレスでも、座り方を間違えればケガにつながります。
競技動作は複合的で、一度に複数の筋に負荷がかかります。そのため、負荷が分散され、どこか一か所に過剰に負荷がかかり損傷する可能性が低くなります。(前述した通り、適切でない競技動作(フォーム)で競技動作を行った場合は怪我につながるリスクはあります。)
一方、ウエイトトレーニングは特定の筋に負荷を集中させることで、トレーニング効果を高める目的があります。そのため、特定の筋や関節に負荷が過剰に集中し、損傷する可能性があります。
ウエイトトレーニングでは、フォームの習得が最優先です。また、負荷設定においても、基本的なRM法などを用いて設定することで、目的に適したトレーニングが可能となります。
次に、トレーニング環境についても注意が必要です。しっかりとスペースを確保しないままウエイトトレーニングを行い、接触が起きてしまった場合、数十キロの鉄の塊とぶつかることになります。また、誤って重りを床に落とした場合、近くに人がいて足の上に重りが落ちて骨折してしまうかもしれません。
そのため、トレーニング施設では、器具の配置やスペース、動線の確保が適切に行われています。
フォームの指導や重量設定、環境の整備などを考えると、ジュニアスポーツチームにおいて、チーム全体に一律でウエイトトレーニングを導入することは難しいと感じます。

ウエイトトレーニングを導入するべき選手の条件

さて、いろいろ考えてきた結果、成長期においてもウエイトトレーニングを導入したほうがいいパターンが見えてきました。
 ①指導者がいて安全にトレーニングができる環境があること。独学でも不可能ではないが、危険が伴うため指導者がいることがベスト。
②プレゴールデンエイジ期にいろいろ遊びや運動に挑戦した
③ゴールデンエイジ期に基本的な身体の使い方と基礎技術を習得した
④ポストゴールデンエイジ期に入り、筋力が発達しやすい期間にはいっている

この4点全てがクリアされていれば、成長期(中学生)においてもウエイトトレーニングを導入するメリットがありそうです。仮に②と③で身体の使い方や技術レベルが相当高いところまでいっていたとします。すると短距離や跳躍種目ではかなりの記録がでます。身体が耐え切ることができない速度やパワーを出せるところまでいく選手が稀にいます。その場合は補強またはウエイトトレーニングで積極的に身体を作ってあげないと怪我をするリスクが高いと考えています。
 また上記の例以外にもウエイトトレーニングを導入するメリットがある状況として、怪我の予防・リハビリ等があげられます。

最後に

散々ウエイトトレーニングについて考えてきましたが、絶対にウエイトトレーニングでなくてはダメな理由はありません。自重の筋力トレーニングでも工夫次第でいくらでも筋力トレーニングはできます。ウエイトトレーニングはたくさんある筋力トレーニングの中の1つの選択肢です。

トレーニングはどれも先人たちから受け継がれた努力の結晶のようなものです。多くの先人が挑戦と失敗を繰り返し、有益だと思われる物を我々に受け継いでくれています。しかし全てのトレーニングは使い方によってはプラスにもマイナスにもなります。正しくトレーニングを理解し、適切なタイミングで導入することで、安全にスポーツを楽しみたいです。
※成長ホルモンの分泌が促進されるとする研究結果は多数存在しますが、骨芽細胞が増え、身長が伸びるというのは理論的な可能性の話であり明確な研究結果ではありません。子供を対象とした実験や研究には倫理的な問題もあり、成長要因は不特定多数の要因が絡み合う為、特定は困難です。
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ABOUT ME
RizeAC track&field
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陸上競技クラブチーム
新潟市を拠点に活動する陸上競技クラブチーム
陸上競技に特化し、専門的にトレーニングを行うチームとして2009年に設立。その後、2020年にはジュニア部門を立ち上げ、全国トップクラスのジュニアアスリートを育成している。
2022
福島全中7名
愛媛U-16 2名
国立U-16リレー 2名
大阪室内 1名
新潟県代表チームのメンバーとして男女ともに歴代最高記録樹立

北信越大会 入賞多数
県大会・通信入賞多数

2023
愛媛全中 3名
U-16 4名
国立U-16リレー 2名
大阪室内 3名
北信越大会 入賞多数
県大会・通信入賞多数

コーチは
後藤大介
(全日本実業団入賞・全日本マスターズ優勝・元マスターズ日本記録保持者)
矢野秀樹
(日本選手権・国体・インハイ・インカレ・全日本実業団で入賞)
猪口悠太
(インハイ・国体・学生個人で入賞)
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