自主練のすすめ
自主練のすすめ
一人でやる自主練が、中高生に教えてくれること
目次
はじめに:ここで話す自主練とは
※ここでは「一人でやる自主練」について話します(中高生向け)
普段はチームで練習することが多いと思います。でも私は、一人でやる自主練もすごく大切だと思っています。
私自身、競技人生の半分以上を自主練に費やしてきました。正直なところ、もっと人と一緒に練習すればよかったという後悔もあります。それでも、一人でやり続けてきたからこそ気づけたこと、身についたものが確かにあります。
今回話すのは、友だちと一緒にやる自主練ではなく、誰にも頼らずひとりで黙々とこなす自主練のことです。
私はコーチとしてメニューを組む時、選手が自主練をする「余白」みたいなものを残すようにしています。自主練してほしいから。
① 「当たり前」を続けることの難しさを教えてくれる
チーム練習と違って、自主練には決まった開始時間も終了時間もありません。メニューも何もない、ゼロからのスタートです。
遅刻しても誰にも怒られないし、サボっても誰も気づきません。うまくいっても、誰も褒めてくれません。
そんな状況で、あなたは練習を続けられますか?
1回や2回ならできると思います。でも週1回続けると年間50回、週2回なら年間100回になります。
誰にも何も言われない環境で毎年100回やり切る。これがほとんどの人にはできないんです。
陸上はフィジカルが重要なスポーツです。地味なことをひたすら積み重ねるしかありません。
当たり前のことを、当たり前に繰り返せるかどうか。結局これがすべてです。
自分で決めた時間に練習を始める。誰も見ていなくても手を抜かない。つまらない基礎練もやり切る。やると決めたことは省略しない。
これを何百回、何千回と続けられるかで、差がついていきます。
この積み重ねが、時間を守る力ややり抜く力を育てます。そして一人だからこそ、自分の身体と丁寧に向き合えて、動きの精度も上がっていきます。
ただし、自主練だけではダメです。
自主練には弱点もあります。一つは継続が難しくなること。もう一つは、客観的な視点が失われやすいこと。
だから基本はチーム練習。そこに週1〜2回の自主練を加えるのが、一番いいバランスだと思います。
② メニューを考える力がつく
チーム練習では、監督やコーチがメニューを用意してくれます。
でも自主練は違います。何をやるかも、全部自分で決めなければいけません。
何をやればいいか考えるとき、多くの人は普段のチーム練習を思い返します。
- なぜジョグをするのか
- ストレッチにはどんな意味があるのか
- このドリルは何のためにやるのか
こうして考えることで、チーム練習への理解がぐっと深まります。
わからないことが出てくれば、メニューを作ったコーチに質問するようにもなります。
その結果、理解が深まり、コミュニケーションが増え、練習の質も上がっていく。いい循環が生まれます。
③ 試合で強くなれる
陸上は個人競技です。普段どれだけチームで練習していても、スタートラインに立つときはいつも一人です。
「一人」というのは、孤独という意味ではありません。そこに至るまでには多くの人に支えてもらっています。ただ、実際に走るのは自分しかいない、ということです。
記録会や地区大会では知り合いも多く、隣のレーンが友だちということもあります。完全に一人になる場面は少ないかもしれません。
でも、勝ち上がるにつれて状況は変わります。全国大会ともなれば知らない選手ばかり。チームメイトも少なく、招集場の空気はピリピリしています。
そんな場面で強いのは、一人でも平然と行動できる選手です。
自主練で一人に慣れていると、試合でも周りの雰囲気に流されません。
さらに、ウォーミングアップ中に違和感を感じたとき、自分で修正できる力も身につきます。
結果として、試合でのメンタルの安定感が大きく変わってきます。
④ 「やらされる練習」から「やる練習」に変わる
チーム練習では、やらされている感が出てしまうことがあります。
その原因は、メニューの意味や意図がわかっていないことにあります。
なぜこの練習をするのか、何を狙っているのかが見えてくると、練習はやらされるものから、自分でやるものに変わります。
そこに自分なりの意識を加えて取り組むこともできるようになります。
自主練をしている人は、メニューを作る側の視点を持っています。だから練習の強度や目的を自分でコントロールできます。
強い選手は、練習中も常に考えながら動いています。
⑤ 自分自身と向き合える
チーム練習では、全体の流れの中にいるせいで、なんとなくできているつもりになりやすいです。
みんなと同じことをしていると、本質的にできていなくても「やった感」だけが残ってしまいます。
でも一人になると、誤魔化しが効きません。
フォームの雑さ、筋力や体力の不足、集中力のなさ、理解の浅さ。自分の弱さと、まともに向き合うことになります。
さらに一人の時間は、自分の人生とも向き合う時間になります。
このまま陸上を続けていいのか。なぜ自分は走っているのか。本当に走ることが好きなのか、それとも誰かに認められたいだけなのか。
勝つことに意味はあるのか。負けたら何も残らないのか。
そういう問いから、一人のときは逃げられません。
自主練は、自分自身を直視する時間でもあります。
まとめ
自主練は、誰にも見られず、誰にも強制されません。だからこそ、価値があります。
チーム練習だけでは得られないものがあるし、自主練だけでは補えないものもある。
両方をうまく使える選手が、強くなります。
保護者の皆様へ
お子さんが「自主練に行く」と言い出したら、ぜひ暖かく送り出してあげてください。
子どもたちは、一人の時間の中でいろんなことを考えています。そっと見守ってもらえるだけで、十分です。
全国で活躍する選手の親御さんをたくさん見てきましたが、声がけはシンプルな方が多いです。
「今日はどうだった?」「次はうまくいくといいね」「コーチに相談してみたら?」「どうすればうまくいくと思う?」
答えを出してあげるより、自分で考えさせる問いかけ。
それが子どもを伸ばす一つの方法なのかもしれません。
