陸上競技選手のピーク年齢はいつ?
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RizeAC
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世界陸上、皆さんは見ましたか? 私(RizeAC 後藤)はサッカーやバスケ、ラグビーを見るように陸上競技を見ることができません。。。 陸上以外のスポーツを見るときは、ゴールシーンに一喜一憂しサポーターと共にコールをしながらビールを飲みたいと思うのですが、陸上となると全く違った見方をしてしまいます。 一歩一歩の接地を見たり、上半身との連動はどうなっているのか、反発の捉え方や選手の癖、レース展開の駆け引きなど細かいところを見すぎてしまい、ビール片手に気軽に見ることができません。そしてすぐに映像を戻してスローで見たくなってしまうのです。職業病でしょうか?いいや、きっと私と同じ人は多いはず!!
普段100mを教えていたり、高跳や砲丸を教えていることが多いですが、私、専門は400mなんです。故に400mの前は気が気じゃありません。 400mのスタート地点にスタブロが設置されているのを見ると鼓動が高まります。400mのスタートラインに立つときの恐怖に比べれば世の中のほとんどのことは、些細なことにさえ思えてきます。 今日で400は最後にしよう。何度そう思ったかわかりません。ですが走り終わった後、スタート前の恐怖など一気に消え去り、もう一本走ればもうちょいタイム出るかも!と思ってしまいます。そしてまた次の試合で400にエントリーして、スタート前は恐怖と不安と絶望を味わう。思えば私の競技人生はただただこれの繰り返しでした。ですが400をやっていなければ全国で優勝・入賞することはなかったでしょう。バトンを繋いだ仲間との絆も400をやっていたおかげです。そんな私のとって特別な400mで32年ぶりに歴史が動いた。
世界陸上男子400mに日本選手が3名出場し、佐藤拳太郎選手が日本記録を更新した。記録は44秒77。従来の日本記録44秒78を0.01秒更新。 0.01秒。おそらく陸上をしていない人にとっては、0.01秒など一瞬にも満たない。ともすれば生きている間で0.01秒という時間の長さを意識したことすらないかもしれない。時計の針は1秒毎だし、体育の授業で50m走を計っても0.1秒単位であろう。 0.01秒、意識すらできない刹那の時間を削りだすために、日本男子短距離は32年の歳月を費やした。その間に、どれだけ多くのスプリンターが散っていったたのだろう。 400mは無酸素運動の限界を超える競技である。 人間は7秒程度の高強度の運動ではクレアチンリン酸をエネルギー源として筋収縮を行っている、8〜40秒までは解糖系のエネルギー代謝を利用する。解糖系のエネルギー代謝は副産物として乳酸を生成する。体内の乳酸値が高くなると、痛みが発生する、身体は急激に酸素と水分を要求してくる。だがしかし400m走は痛みが発生し、酸欠になってもまだ終わらない。そこからさらにもう一歩踏み込むのだ。最後の力を振り絞り、動くはずのない身体を動かす。ようやくゴールした後も、酸欠と乳酸からくる痛みに悶え苦しむ時間が待っている。 一番きつい種目は何か?しばしば陸上選手の間で議論されるが、400mは紛れもなく最もきつい種目のうちの1つだ。 32年間、超えたくても超えられなかった、それどころか44秒台に辿り着くスプリンターすら現れなかった。32年間止まっていた記録がついに動き出した。 しかも2人も同時に44秒台を出し、一人は0.01秒、日本記録を更新。 今回の世界陸上の全種目を通じて、男子400mが私が一番興奮した瞬間だった。
記録とは常に更新されていくもの。 永久不滅の大記録などあってはならない。先人達が築いてきた努力の上にさらに努力を重ね、乗り越えてこそ意味がある。 今回の日本記録更新は、時間をかけて分析され、さまざまな形でフィードバックされるだろう。そのフィードバックを受け取った内の誰かが、必ず今回の記録を上回り、また日本記録を更新する。しかし今度は32年もの歳月をかけてはならない。動き出した歴史をさらに先へ進めよう。私の努力など微少な影響すら及ぼさないかもしれないが、それでも努力することをやめる訳にはいかない。ロングスプリンターの端くれとして、指導者の端くれとして、少しでも陸上競技に貢献できるように努力していこう。 たった0.01秒が人の心を動かす。 陸上競技は本当に魅力的だと再確認できた。